ある意味奇跡の巡り合わせ
夜。帰り道。
暗然とした中で、ベンチの上に何かを見つけた。
黒い皮の財布。
今、僕は金欠。
その中でどうやら落し物の、財布を見つけてしまった様だ。
しかも時間も時間だった為、見ている人は誰も居ない。
「……こんなとこにあったら、やっぱり届けた方が良いよな。」
「でも誰も見てない。届けるんだとしても、少し位抜いた位じゃバレやしないさ。」
葛藤。
悪いとは思いつつ、まずは財布の中を確かめる。
手にとって見ると、重たい。開けてみると……
カード、カード、カード、カード、札、札、札、札、札、札、札、札、札……。
学生にはとても、成し遂げられ無そうな内容の財布だった。
「こんだけあったら、一枚くらい札を抜いたってバレやしねえ!」
悪魔の囁きが聞こえてくる。
財布を閉じて、走り出す。
……結局そっくりそのまま、落し物として渡してきたとさ。